山口蓬春記念館 令和3年度 新春企画展
山口蓬春の古陶磁が奏でる美の世界
2022年2月5日(土)~4月3日(日)
昭和28年(1953)、神奈川県葉山町の山口蓬春の邸宅内に、近代数寄屋造りの名匠・吉田五十八設計による新画室が建てられます。その画室には制作の場としての空間だけでなく飾り棚が設けられ、そこには蓬春が蒐集した古今東西の古陶磁などが飾られました。「絵の材料にしようという狙いから入手しますが、しかし結局は好きだから集めるのですね」(「鴛鴦鼎談」『陶説』53号、昭和32年[1957]、日本陶磁協会)と陶磁器専門雑誌の取材に蓬春は答えています。これらの蒐集は東京美術学校を卒業した大正時代末頃より始まったといい、はじめ「中国のものが一番先に好きになりまして。」(前掲書)と中国・唐時代の立女俑を入手していたようです。その後、蓬春は朝鮮やペルシア、日本など実に様々なものに関心を向け、そのコレクションは充実したものになってゆきました。そして、それらのコレクションは作品のなかにモティーフとして登場するようになり、とくに昭和30年代には、花や果物などと組み合わせた静物画として多数描かれるようになります。蓬春は、同じテーマで繰り返し描くことで、色彩の交響的な効果を図り質感と量感を把握して物を立体的に描き出しています。そこに新しい日本画の創造を模索する蓬春のそのものの美を追求する姿勢を垣間見ることができます。
本展では蓬春が愛蔵した数々の古陶磁を展示し、画家としての魅力だけでなく蒐集家としての側面を紹介するとともに、日本画や下図などから蓬春がいかにして古陶磁を作品に取り込んでいったのかを探ります。
本展のみどころ
1. 実物と大きさが違う!
古陶磁とそれが描かれた作品を並べることで、蓬春の創作の工夫を読み解きます。
2. 制作の舞台裏を覗く
蓬春は、画家が写生や下図を見せることは「丁度舞台人が楽屋の中を見られるやうなもの」(*)と述べていました。本展では、普段目にすることのない写生や下図を展示し、古陶磁が日本画に描かれるまでの一連の流れをご紹介します。
*『現代名家素描集 第一輯 山口蓬春自選 植物篇』昭和15年[1940]、芸艸堂
3. 愛蔵の《三彩樹下美人俑》を展示
蓬春が「これは僕の二号さんだよ」と称したお気に入りの中国・唐時代の俑を展示します。